院長コラム #5帯状疱疹(たいじょうほうしん)と帯状疱疹後神経痛 一覧に戻る
帯状疱疹は水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって神経損傷による痛みと帯状の発疹が現れる疾患です。発疹は胸と背中に現れることが最も多く、現れるのは身体の左右どちらか一方です。初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると水ぼうそうとして発症しますが、水ぼうそうが治った後もウイルスは体内の神経細胞に潜んでいます。日本人の多くは幼少期に水ぼうそうに罹っているため、日本人成人の90%以上がウイルスを保有しています。水ぼうそうに罹ったことがある人なら誰でも帯状疱疹になる可能性があります。加齢やストレス、過労などでウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動し始めて帯状疱疹として発症します。50歳代以上に多くみられる疾患ですが、強いストレスや過労が引き金となり40歳代以下で発症することも珍しくありません。日本人では80歳までに3人に1人がかかるといわれています。通常は生涯に1度しか発症しませんが、免疫力が低下するような疾患や薬を服用している場合などでは2回以上発症することがあります。帯状疱疹患者から他の人に帯状疱疹としてうつることはありません。水ぼうそうに罹ったことのない人に水ぼうそうとしてうつります。
帯状疱疹後神経痛は皮膚の発疹がなくなった後も残る神経性の痛みで、3ヶ月以上痛みが残る場合に診断されます。帯状疱疹に罹った人の10%前後に発生しますが60歳以上では20%、80歳以上では30%と年齢が高くなるほど発生頻度が高くなります。数ヵ月で痛みは消失しますが約20%の人は1年以上続きます。稀に、5年以上たっても痛みが消えないという人もいます。帯状疱疹の治療が遅れるほど発症する可能性が高くなるため早期治療が必要です。治療は内服薬が中心ですが神経ブロックやレーザー治療を併用することもあります。
帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛は予防できないのでしょうか。実は、子供のころに受けた水ぼうそうワクチンが発症予防あるいは重症化予防に効果的です。しかし、25年ほどでワクチン効果は消えてしまうためほとんどの成人は再接種が必要です。
数年前に「シングリックス」という帯状疱疹に特化したワクチンが厚生労働省に承認されました。水ぼうそうワクチンよりも発症あるいは重症化への予防効果が強いとされています。日本では50歳以上を対象に接種が推奨されています。興味がある方は調べてみてください。